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photo 木はいったん水に浸けてから乾かす!
 
割れがクレームにならない関係。でも、だからそれでいいのか?
乾燥していない木を使って施工したために後から割れが入ることが引き渡し後のクレームとなることも少なくない。「そもそも、家に人が住み始めると、除湿しているのと同じ状態になるんです」定成先生は言う。「だから、竣工時にはまだ割れが出ていなくても、人が住んで少しすると割れが入って来る。しかも、最近の家は昔の家にくらべると気密性が高い上に空調設備も備わっています。気乾含水率に達するのが15%を切って10%近い場合も少なくない。割れはますます入りやすい状況になってきています。」

そのため、構造材を表にあらわして使う家づくりをするつくり手は「木の乾燥による変形」についてあらかじめ住まい手に説明をしている。「住み始めて少し経つと、ピキッ、バシッと木の割れる音がしてきます。それは木の自然な性質で、構造的には問題ありませんから・・」これまで木の家ネットのつくり手が施工した家のお施主さんに会うと、「本当にそうなのでびっくりしました。木って生きているんですね」という声を聞くことが多い。

木の自然な性質について、顔の見える関係の中であらかじめ説明してあれば、クレームにはならない。でも、それで本当にいいのだろうか。そんな宮内さんの疑問が「お施主さんは了解してくれてはりますけれど・・・」という言葉の余韻の淀みとなってあらわれるのだ。
宮内工務店 宮内政男さんに聞く
 
 
「お客さんは木の家に木のもつ本来のよさを求めるかわりに、割れや裂けといった欠点を認めてくれてはります。けれど、その欠点を求めているわけではない。木が本来もっているよさを損なわない、しかも後から割れや裂けの少なくて済む自然な乾燥方法がほかにないものだろうか。」というのが宮内さんの問題意識の中身なのだ。

その答を見つけようと「昔はどうだったのだろう・・」宮内さんは思いを馳せる。古くから残っている建物を見ると、新築の木組みの家と比べると、割れや裂けが少ないように見える。それはなぜなのか。「年のいった大工や、山仕事に携わる人たちに訊いてみると『そりゃあ、今は木を水に浸けないからや』という言わはるんです。」

トラックがなかった昔は、山で伐採した木を川で筏に組んで下流に運んでいた。東京に「木場」という地名が残っているが、それは東京の材木商がかつて、上流から筏で運ばれて来た木をそのまま川にストックしていた貯木場があったことに由来する。「昔は木をいったん水に浸けてからひきあげて、それから自然乾燥させていたんやね。みんな木場のことは知ってはいる。でもそれが乾燥の技術であったことは忘れてしもうたんや。」先人達は木をまずはいったん水につけた状態から、自然乾燥をスタートさせていたのだ。

伐採してから家を建てるまでの時間がゆったりしていた昔は、ゆっくり自然乾燥させることができたため、竣工後の狂いという問題はもともと起きにくかった。だが、現代では、原木生産者も、材木商も在庫をもちたがらない。伐った木をすぐに現場に出していかないと、経済効率が悪い。そのために、伐採後、木はすぐにトラックで製材所に運ばれ、人工乾燥機にかけられ、現場に運ばれて来る。

宮内さんは言う。「石油をぎょうさんつこうてボイラー焚いて、伐ったばかりの木をサウナに入れて無理矢理汗しぼりだすような、無理な乾燥をする。その結果、表面は乾いていても中はまだ濡れている、しかも木そのものの性質がねじまげられた、変な木になってしまう。それはおかしいんやないか。かといって、ただただ自然乾燥させたのでも、なかなか芯までは乾かない。無理のない、しかも効果的な自然な乾燥方法として、先人が知ってか知らずしてか実行していた、そして今では行われなくなってしまった水中乾燥を復活させたらええんやないかと思いはじめたんですわ。
 
  途切れた技術を再発見する。
途切れた技術を再発見する。宮内さんは伝統技術をそうとらえている。「効率化の流れの中でいつのまにか失われて行った技術って、ぎょうさんあるように思います。たとえば塩を工業的にでなく、海水を天日干しする自然塩が復活している。新月伐採が話題を呼んでいるが、かつて日本にも月の暦に応じて木を伐採する習慣はあったらしい。みんな昔にちゃんとあった技術なんです。」
 
 
「伝統構法も同じです。長い歴史があるのに、戦後ずっと置き去りにされてしまった。その結果として、伝統構法をやみくもに「守らな」という言い方しかしなくなってしまっている。けど、それやと長い歴史と今とは断絶したままになってしまう。今の視点に立って、昔からある技術を科学的にも再検証する、そしてよいものを復活させる、続けて行く。伝統構法のよさを知る大工だからこそ、そういうスタンスでいくべきでないか。これが宮内から大工たちへの檄や!」。
 
 
出会いと広がり
そして宮内さんは、地元の仲間と木の家づくりについて学び合う「木考塾」を通して、木材乾燥を研究しているポリテクカレッジ滋賀の定成先生とめぐり逢う。農学部の出身である定成先生は、若い頃に大学演習林の木を伐採した経験から、池に浸けて保存しておいた木の方が後々の状態がよいことに早くから気づいていた。「木は雨ざらしで置いておくのがいちばんいいんだ」と年寄りの大工に言われた事も気にかかっていた。そして木材の乾燥を専門とする中でも、水中乾燥を自分の研究テーマとしていったのだ。「4年前、カレッジに自作のプールを作り、原木をつけておく実験をやってみたら実際に割れが少なかったんです。そしてなによりも挽いてみるとその肌が湯上がり美人のように美しいし、杉が本来もっている甘い匂い。木のよさが損なわれていないんです。」

木は生きている。そのことを十分に知り抜いている現場の大工と研究者とが、それぞれの問題意識を追求する途上で出会った。そして2005年、二人の出会いから滋賀県認定の特定非営利法人「甲賀・森と水の会」が生まれ、本格的な水中乾燥実験がスタートした。そのひとつめが2005年10月からの製材所での水槽実験、ふたつめが2005年11月からはじまった貯水池に400本の杉を浮かばせるという大掛かりな水中乾燥実験だ。詳しい経過報告は随時「甲賀・森と水の会」のブログで読む事ができる。

「NPOの代表は定成先生です。このことをいっしょに考えてくれはる設計士の川端さんが事務局を、地元の滋賀の木を使うていくにあたって協力してくれはる甲賀森林組合さんが実験の素材となる木を出してくれてます。ほかに、水中乾燥材を世の中にアピールしていくためにマーケティング面で応援してくれる専門家も加わってます。異業種ばっかりの集まりですけれど、それがおもしろさや力になるんですわ。出会いがものごとを動かして行くことを日々実感してます。人と出会うために、生きてるんやわ、ほんと、そう思いますね。」
 
       
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