topページへ つくり手インタビュー
   
長谷川敬さんに聞く
photo 大地とのつながりを取り戻そう
 

自分で食べる物を、自分で作ってみる
ヨ:私も、中高生の頃に「自宅って兄弟が学校に、親が会社に通うための寄宿舎みたいなところだな」と感じたことがありました。そしてそれ以来、どこかもっと「生の実感」がある暮らしを求めてきたような気がするんですよ。それが今回の移住にもつながったのですが。単にここが空気のいい、景色のよいところに住む、というだけでは別荘と変わりません。そこからもう一歩、ここの大地とのつながりをもてる生活に、一歩踏み出したいな、という重いがあります。この春からはじめますが、家族の口に入るものを、家の目の前の畑でつくることで、そうした実感がひとつ、つかめるんじゃないかと期待してます。

長谷川:ぼくも、市民農園の一画を借りていて、朝ごはんに食べる葉物やなんか採りに行ってるよ。夏の間はサンルームの前に棚にへちまやひょうたんをつくって、日よけと野菜づくりを兼ねている。涼しくていい。都会の生活だけれど、蒔き時や収穫時期があって季節感もあるし、何より楽しみだね。

ヨ:仕事をして振り込まれたお金をおろして、スーパーに買いに行くという「遠回り」ではなく、縁側の前の畑に種をまいて、水やり・草取りして収穫して、その季節に食べる。そんなダイレクトな、分かりやすさこそが「生の実感」じゃないかな。こどもたちにとっても「食べるものは、つくれるんだ!」という体験が、生きる力になると思うんです。お母さんもやったことないのだから、いっしょに試行錯誤でしょうけれど、それがまた楽しみです。Webサイトづくりと、畑と、いいバランスでね。

長谷川:最近はやりの「農的暮らし」ね。


本格的に取り組める区画農園、収穫主体のおたすけ農園など、さまざまな利用法ができる。宿泊施設もあり。
(詳しくはこちら)




都会でも、大地とつながることはできる
長谷川:都会でだって、庭がなくたって、市民農園的なものはある。これをはじめるとかなり生活変わりますよ。ワークデーもつい、駅まで行く道より遠回りになっても、農園の前を通って行くようになっちゃう。やれ芽が出たとか、なってきたな、とか。これが、楽しいんですよ。市民農園でなくビルの屋上の菜園でもいいし、魚屋さんからもらってくる発泡スチロールのトロ箱だっていいんです。都市農業の生き残り方のひとつとして、農家が市民農園を経営していくのもいいと思っています。練馬区大泉に「風の農園」というとことがあります。農地を300ユニットぐらい細分化して年間3万円で市民に貸して、指導もしている。農家にとってもいい現金収入になるし、借りる方も、3万で指導も受けられ、自ら体験もでき、生産物ももらえるんだから、とてもいいと思いますよ。

ヨ:私たちが住む高根町にも、「クラインガルテン」があって、都会からの通いの人が無理なく続けられるような工夫がしてあります。ポイントは、生活の中でそのように大地とつながる時間がとれるかどうか、ですね。本業以外に、生きる基本にかかわることに時間をかける、本業で得るお金以外に食べる手だてがある、ということが生活を豊かにしますよね。精神的にも本業にだけよっかかっているより、汲々としないで済むようになり、結果的にほんとうに価値のある仕事をじっくりとすることにつながると思います。うちの場合は、高根町に来たことで家賃も安くなったし、買い物するところもないから、ときどき東京に出て行く交通費を計算にいれても、支出はおさえられます。ただ、その根本には、ADSL回線がこの八ヶ岳の山裾にまで来ているというインフラが欠かせません。

長谷川:技術が田舎暮らしを支えるという側面もあるんだね!

ヨ:インターネットの回線が住める場所の自由度を高めました。ぎりぎりいっぱい山の方に来た、という感じでしょうか。使うものは使いつつ、生活自体を循環的な暮らしに近づけていくことで、生きる実感をつかめれば最高です。大気の変化、山の見え方、星空、植物の移り変わり・・・など、壮大な季節の循環の中にいることは、日々、肌身で感じていて、それはとってもしあわせなことだと思います。





都会での「働く家」のキーワードは「物質循環」
長谷川:生活をできるだけ自然の循環の一部に返してあげることで、住んでいる人も元気になるんだよね。そう考えると、家は、その家族が生き生きと暮らす感覚を取り戻すための、大事な場所、社会とは別の生きがいをつくる、個人や家族の王国なんだ。生活を豊かに、ビビッドなものにしていくための仕組みが結構、未開拓なままであると思うんです。そういう生活を望む人のためにその仕組みをつくる。それも設計の仕事だと思っている。 

ヨ:なにもしないで済む、ホテルのような家じゃあ、もったいない!と思う人のためにね。で、具体的には、どのようなことを設計に組み込むのでしょうか?

長谷川:ぼくは東京の国分寺で設計事務所をしているので、都会での「働く家」を考えています。東京には自然がないと言ったって、土の上に生きていること、自然の恵みを食べて廃棄物を出すこと、雨も降るし、水を毎日利用することなど、自然と暮らしとのつながりは密接です。ですから、特に物質循環に注目して、自然や土地とのつながりを、各家庭で取り戻せるようなことを考えます。それから、土間や屋根部屋など、何でも自由にやれるスペースを、なるべくつくる。多くの個室よりこっちをすすめますね。また、未完成の家を、家族で住みながら造っていく、なんていうのもいいですね。

ヨ:未完成といえば、うちの改修もそうですよ〜。春になったら、西側の縁側の、障子と雨戸の間に、ガラス戸を入れて、夏にならないうちから日が入るようにしたいと思っています。これは木の家ネットの伊那の会員の有賀建具さんに教わったのですが、来年の冬に向けて、北の廊下の床下を補強してレンガを積んで、蓄熱性のいいペチカも作りたいな。物質循環でいえば、今回長谷川さんのインタビューの撮影でお世話になったSさんにEMボカシ堆肥の作り方を教わったので、さっそく春からの畑に向けてやってみようと思います。ほかにも、合併処理槽で家庭排水をきれいにする仕組み、太陽光利用の温水供給、コンポストなど。意識しなければ公共サービスがやってくれる部分を自分の家でやってみるという可能性は、それぞれの家庭で、探せそう
ですね。

長谷川:自然に逆らわず、気持ちのよい暮らしをしよう、ということです。家のつくりようで、日本の伝統的な家にならって軒の出を深くする、縁側的な空間をとるなどで、工夫できる部分もたくさんあります。そして、物質循環について、社会的にやってくれることと、家庭でできることとを考えます。家庭でできることが少なくなっていることが、大地と生活をきりはなしているので、それを少しずつ、できることから取り戻そうというのが現代の「働く家」です。公共下水の通っていないところだったら、家庭で使った水を合併浄化槽できれいにして、それで庭に池を造ったり、小さな菜園や花壇の水やりができたりしたら、すてきでしょう?下水道があるところだって、雨水を貯めて、そんなことをしながら直接大地へ還すこともできる。

ヨ:そうですね!水もよろこびますよね。

長谷川:そして、ここからは社会でできること、になるのですが、本当はそのようにして浄化された水が小さな流れとして各家庭から出て、地域の小川になって、公園に注ぐ。その公園も、遊びにしか使えない単機能の公園でなく、市民菜園や雑木林、ため池や小川を兼ねている、という風になるとさらによいのです。まさに、里地里山的な環境を、わざわざでなく、家庭での物質循環とのつながりでつくれるんですよ。現状ではせっかく個人の努力で合併浄化槽を使っても、そこの家庭から先は排水溝に入ることになって、もったいないんですよね。そもそも、密度の低い郊外には、公共下水道は要らないんです。

ヨ:社会がもっと物質循環を意識するようになれば、都市計画も変わってきますね。


       
  前ページ 0 | 1 | 2 | 3 次ページ


木の家ネットの会員 会員が実践する木の家づくり 更新ページ
topページへ

このサイトについて
地域別
 北海道・東北関東(東京以外)東京
 東海甲信越・北陸関西
 中国・四国・九州
職人がつくる | 日本の | 木の家
人に健康、環境にやさしく
いざという時に心強く | 末長く
愛着をもって住める家
そんな家を求めるあなたと
つくる私たちの縁結びのサイトです
現場レポート
インタビュー
赤堀楠尾の林材レポート
伝統構法の復権
木の家そもそも話
木の家Q&A
木の家ネット 総会と活動
 (c) 「職人がつくる木の家ネット」プロジェクト   web: http://kino-ie.net