
長谷川:生活をできるだけ自然の循環の一部に返してあげることで、住んでいる人も元気になるんだよね。そう考えると、家は、その家族が生き生きと暮らす感覚を取り戻すための、大事な場所、社会とは別の生きがいをつくる、個人や家族の王国なんだ。生活を豊かに、ビビッドなものにしていくための仕組みが結構、未開拓なままであると思うんです。そういう生活を望む人のためにその仕組みをつくる。それも設計の仕事だと思っている。
ヨ:なにもしないで済む、ホテルのような家じゃあ、もったいない!と思う人のためにね。で、具体的には、どのようなことを設計に組み込むのでしょうか?
長谷川:ぼくは東京の国分寺で設計事務所をしているので、都会での「働く家」を考えています。東京には自然がないと言ったって、土の上に生きていること、自然の恵みを食べて廃棄物を出すこと、雨も降るし、水を毎日利用することなど、自然と暮らしとのつながりは密接です。ですから、特に物質循環に注目して、自然や土地とのつながりを、各家庭で取り戻せるようなことを考えます。それから、土間や屋根部屋など、何でも自由にやれるスペースを、なるべくつくる。多くの個室よりこっちをすすめますね。また、未完成の家を、家族で住みながら造っていく、なんていうのもいいですね。
ヨ:未完成といえば、うちの改修もそうですよ〜。春になったら、西側の縁側の、障子と雨戸の間に、ガラス戸を入れて、夏にならないうちから日が入るようにしたいと思っています。これは木の家ネットの伊那の会員の有賀建具さんに教わったのですが、来年の冬に向けて、北の廊下の床下を補強してレンガを積んで、蓄熱性のいいペチカも作りたいな。物質循環でいえば、今回長谷川さんのインタビューの撮影でお世話になったSさんにEMボカシ堆肥の作り方を教わったので、さっそく春からの畑に向けてやってみようと思います。ほかにも、合併処理槽で家庭排水をきれいにする仕組み、太陽光利用の温水供給、コンポストなど。意識しなければ公共サービスがやってくれる部分を自分の家でやってみるという可能性は、それぞれの家庭で、探せそうですね。
長谷川:自然に逆らわず、気持ちのよい暮らしをしよう、ということです。家のつくりようで、日本の伝統的な家にならって軒の出を深くする、縁側的な空間をとるなどで、工夫できる部分もたくさんあります。そして、物質循環について、社会的にやってくれることと、家庭でできることとを考えます。家庭でできることが少なくなっていることが、大地と生活をきりはなしているので、それを少しずつ、できることから取り戻そうというのが現代の「働く家」です。公共下水の通っていないところだったら、家庭で使った水を合併浄化槽できれいにして、それで庭に池を造ったり、小さな菜園や花壇の水やりができたりしたら、すてきでしょう?下水道があるところだって、雨水を貯めて、そんなことをしながら直接大地へ還すこともできる。
ヨ:そうですね!水もよろこびますよね。
長谷川:そして、ここからは社会でできること、になるのですが、本当はそのようにして浄化された水が小さな流れとして各家庭から出て、地域の小川になって、公園に注ぐ。その公園も、遊びにしか使えない単機能の公園でなく、市民菜園や雑木林、ため池や小川を兼ねている、という風になるとさらによいのです。まさに、里地里山的な環境を、わざわざでなく、家庭での物質循環とのつながりでつくれるんですよ。現状ではせっかく個人の努力で合併浄化槽を使っても、そこの家庭から先は排水溝に入ることになって、もったいないんですよね。そもそも、密度の低い郊外には、公共下水道は要らないんです。
ヨ:社会がもっと物質循環を意識するようになれば、都市計画も変わってきますね。
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