topページへ つくり手インタビュー
   
丹羽明人アトリエ 丹羽明人さんに聞く
photo お施主さんと話し合って、伝統構法
 

家を建てたい若い家族にとって自然素材は常識
「家を建てたい」という希望で来る人は、こどもが生まれる、とか生まれたという30代から40代半ばぐらいのご夫婦が多いです。小牧あたりだと東京や名古屋の中心部より土地に恵まれていますから、親がもっている土地に建てる、今住んでいるところを建て換える、などというケースが半分以上。そうでなく更地から建てるのでも、土地が安いですからね。東京とくらべると、若い夫婦にでも家を建てるゆとりがありますね。

3年前にホームページをつくっています。設計の相談に来る人はほとんどそれを見て来ていますから、土壁や伝統構法をやっていることはご存じです。ホームページを開設した頃には「自然素材」なんていうことは意識されていませんでしたが、今では、常識になりつつあります。でも、国産材とか木組みとまで突っ込んだ希望をはじめからもっている人はまだまだ少ないです。事務所に来られた時に、木のよさ、特に木のねばり強さを十分に活かすには木組みがいいんだ、ということをお話するうちに、だんだんお客さんもそっちがいいと思いはじめてきますね。

限られた予算の中で質を落とすことなく家を建てるには?
「じゃあ、家を建てましょう」とプランを煮詰めていくと、なんだかんだといって、建築工事費を坪数で割ると、坪70〜80万にはなります。間取りが自由なプランニング、自然素材を使っているというクオリティー、それを活かす構法になっていること、設備で無理やり調節してしまう以前に建物自体が快適できもちよく健康にもいい、などという「中身」にひとつひとつに納得がいくと、それくらいの坪単価になることを理解してはもらえます。住宅メーカーの営業費を含んだ坪80万よりは、こっちの坪80万の方が自分たちに帰ってくる実のある金額だな、とね。

大概、建坪×坪単価で概算を弾いてみると、予算をオーバーするケースが多いんです。でも大工さんの手間賃の部分には手をかけないでと、お施主さんの方から言ってきます。で、設計内容を見直すことでオーバー分の調整をします。簡単なのはオプション的なものをけずること、「あるといいけど、なくてもいい」天窓、キッチン関係の設備などですね。そしてさらに、根本からプランニングを見直すことで建坪を少し減らすわけです。

このあたりの人は大体「新築するなら50坪は欲しいな」と言うんです。坪70万として3500万になるから、予算オーバー、無理ですね、ということで簡単に答を出してしまうのでなく、住まい方を根本から見直します。面積的には50坪なくても、それ以上の使い勝手ができればそれでいいんです。

東京で培った経験からいうと、30坪あれば、5人家族ぐらいなら暮らせます。そういうと、こっちの人はびっくりしますが。だから、いろいろ整理していけば、なんとか納まっていくんですよ。同じ8畳間でも立体的な構成にすることで、広さは十分に感じられるようにするとか、個室は小さくてもいいからみんなが集まる部屋がゆったりしていればいいんじゃないの?とか、玄関ホールのような「単機能スペース」をつくらないとか。見直してみれば面積を整理できるところがいっぱいあるんです。


 
長いスパンで家族のことを考えられる家
ぼくの仕事は、住む人のこれからの生活のデザインを、いっしょに考えていくことだと思っています。相談に来られた方に「子供部屋はいくつ欲しいですか?」「リビングは何畳?」なんていうことはけっして聞きません。「どういう時にゆったりしますか?」「20年後はなにをしているでしょう?」など、もっとフリーに、大ざっぱなことから話をしていきます。頼んでくる人と自分が世代的に近いせいもあって、相談しやすいみたいですね。ぼくも小学生を筆頭に3人のこどもを育てている最中です。だからお施主さんにものを教える立場ではなく、自分もあれこれ悩みながら子育てしているひとりの親ですからね。いっしょに考えていく感じで打ち合わせを進めていきます。

家をつくるとなると、どうしても「今の」家族メンバーでの生活からしかイメージできないことが多いために、間取りを固定的に考えがちなんです。通し柱の樹齢を考えると、家は最低80年から90年はもちますし、保たなければいけません。でも50年もすれば今の家族メンバーはひとりもその家にいないかもしれない。10年先のことだって分からない。「10年もすれば息子さんも下宿しているかもしれませんよ」なんていう話をしていくうちにお施主さんの方もだんだんに「こどもが何人だから個室がいくつ」というなんとなくあたりまえ、と思っていたことに縛られずに、自由な間取りを発想できるようになっていきます。こどもが将来巣立っていったあとの生活にまで考えを及ばせてね。

「勉強机神話」からの解放
名古屋地方ではこどもが小学校にあがると、いろんな機能がじゃらじゃらとくっついている「勉強机」を買うのが常識。それを置ける子供部屋がないと、という発想になりがちですが、個室をあてがったから勉強するというものでしょうか? むしろ逆のことも多いのでは? そもそも10年のうちには巣立っていってしまうこどもひとりひとりに、本当に勉強部屋がいるのでしょうか? そんなところからもういちどいっしょに考え直します。

最近やっているのはリビングと別に、その時に応じた使い方をする「サブのリビング」をつくること。そこにパソコンとか雑誌とか勉強道具とかをもっていっちゃうんです。模型の家の例では2階にオープンなスペースとしてとっているので「ギャラリー」と呼んでいます。こどもたちはそこで勉強してもいいし、遊んでもいい。そういうスペースがあれば、こどもたちの個室は小さくたっていいんです。寝られればいい。サブのリビングが取れなければ、うんと広い食卓をつくるんでもいいんです。こどもたちはそこに宿題を持ってきてやる。お兄ちゃんが妹の勉強を見てやってもいいし、お母さんの目も届く。食卓から出発した発想で、家族の関係も変わってきます。
 
伝統構法は間取りが自由になるから長く使える
今の家は、何LDKという個室の数ばかり重視していくあまり、一部屋が単機能でしか使えなくなっていって、融通が利かないんですよね。昔の日本の家はもっと融通が利くものでしたよね。お茶の間はリビングにもダイニングにもなるし、座敷や客間でも布団を敷けば寝られる。なんにでも使える空間がいくつかあって、その時に応じて仕切ったり開放したりして、臨機応変に使っていたものです。

その時どきで自由な使い方のできる間取りであるためには、基本の構造体は木組みでしっかりつくっておいて、間取りはフリーにレイアウトできる伝統構法だと「今の家族構成に合わなくなってきたから、建て替えなければ」ということがないんです。長い目で見た柔軟な生活のデザイン、自然素材、補修のしやすさ、木のねばりを活かした強い構造。いろいろな利点を話していくと、伝統構法がいいね、とお施主さんも納得されて、予算の都合でたとえば瓦葺きにはできないことはあっても、基本的には伝統構法に落ち着いていくケースがほとんどですね。
 
伝統構法の家づくりは、未来へとつながっていく


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小牧の東の丘陵地帯の一角に、市民参加でNPOをたちあげて循環型の生活拠点となる「エコサイト」をつくろう、という提案をし、イメージスケッチを描きました。今みんなで1/50の模型を作っているところ。いろいろなアイデアがとびだしてきて、面白いですよ。雨水利用、太陽光発電、合併浄化槽。使わなくなったベビーカーやこわれた自転車をもちこんで、手に技をもっているおじいさんとこどもとでいっしょに直すようなリサイクルステーション。市民団体が使えるセミナールーム。環境グッズやリサイクル品を売るショップ。土壁のワークショップなどをしながらみんなでつくっていく自然素材の民家。そんな施設が、畑の中に点在しているよう なイメージです。

伝統構法の家づくりを実践することと、これからの持続可能な未来を考えることとは、ぼくの中では一致しているんですよ。これからの家族にとっても、環境にとっても、長く住めるいい家づくりをしていきたいと思っています。
 
  【参考図書】
日本の壁  


「消費する家」から「働く家」へ
シリーズ「土曜建築学校」


長谷川 敬・村田 徳治・和田 善行 共著

1996年 建築資料研究社刊
2,427円


 

       
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