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もっとオソロシイことに「さあ、筋交いが入ったから、これで建物もしっかりしたはず!」と、勇んで2階にあがってみると、怖いくらいに建物がプルプル揺れるんですよ。まあ、筋交いのほかに雑壁が3割あることを前提に筋交いの量は設定されているんですが、3割足りないっていう話じゃないっていうぐらいに「プルップル」なんですよ。筋交いなんてほんとに効いているのかな、意味あるのかな、と心底疑問に思いましたよ。筋交いなんてほんの薄い板がとまっているだけ。めりこむし、大工さんも「こんなの効かねえよ」って言うしで、なんだか不安になってきてしまいました。
じゃあ、と住宅金融公庫の仕様基準に書いてある「筋交いプレート金物」をもっていって「これを釘でしっかり留めてね」とお願いすると「こんなの打ったらバキバキに割れちゃうぞ」って言うんですよ。公庫の基準には「予備穴をあらかじめ開けておいたところに釘を打つ」と書いてあります。でも、大工さんの作業手順からしたらそれは考えにくいんですよ。だって、金物にあいた穴にドリルをさしこんだら、ドリルが傷みますよね。そこにもいわゆる施工基準と現場との矛盾を感じましたよ。
日本全国にはこんな仕様の通りに、筋交いと金物でつくっている住宅があふれている。要するに仕様書を守ったところでプルプルのバキバキですよ。バキバキの方はある程度施工能力でカバーできるとしても、プルプルはどうしようもない。どうしたらいいんだろう、という疑問が膨らんでいきました。そこへきて、あの阪神大震災です。震災の現場を見て歩き、次に来るといわれる東海地震が本気で心配になりました。
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それから一年後、それまでなんとなく信じてきた基準が、守っても意味のない基準なんじゃないか、という疑問が広がり「こんな工法の設計をしているのでは納得できない」という思いが、ぐつぐつと煮えたぎってきた頃、長谷川さんの『働く家』を読んで感銘を受けた、という人の仕事が舞い込んできたんです。ぼくに相談に見えた時には、新しい住宅地に新築、ということでいらしたんですが、よくよく訊いてみると、本当は奥さんがこどもの頃に住んでいた築80年の家を活かして家を建てたかった、というんです。かなりいたんでいて、まわりから「やめとけ」とさんざん言われて、あきらめたところなんだと。
ところがそのお施主さん、弁護士さんなんですが、野良着なようなかっこうで、こどもが4人もいて、どろだらけになって畑をするのが好きで・・・およそ新興住宅地には似合わないような方なんです。「いちどその古い家を見に行ってみましょうか」といっしょに行ってみると、たしかに根もとは蟻にくわれているし、土台は腐っているし、相当傷んではいたけれど、つくりはしっかりしていたんですよ。見晴らしもいいし、残すだけの価値はある。
ちょうどその頃、阪神大震災のあとで松井郁夫さんたちが「木住考」をたちあげたり、鈴木有先生が伝統型構法の実験をされたりと、伝統的な木造住宅の見直しの機運もたかまってきていた頃でもあり、個人的にも、ずっとくすぶっていた疑問に対する答えが、伝統的な貫・土壁の構法の中にあるんじゃないかな、と思っていたところでしたから、思い切ってこう言いました。「お金も手間もかかるだろうけれど、なんとかなるんじゃないかな、直せないことないですよ」お施主さんも「だったらこっちにして」ということになって、それでその古い家の補修をはじめたんです。
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現場を詳しく見て感心したのは、その家がとにかく「直しやすい」ということでした。傷み方はひどいんですよ。床が下がってたり、柱が腐っていたり。ちょっと見には「これは壊すしかないね」という感じなんだけれど、地元の古い大工さん呼んで見てもらうと「あ、これは簡単に直るよ」って言うんです。
なるほどそうなんです。畳をはがせば、荒板が並んでいて、その下はすぐ土間なんですから。つるっと見渡せば、柱がどういう状態になっているか、一目瞭然。腐っている柱があれば根元をすげ替えればいいし、土台が下がっているところはジャッキアップして下にかませてやれば直っちゃう。今の建物で土台が下がったとしたら大ごとです。基礎は巨大なコンクリートのかたまりだし、建物はみんなアンカーボルトでがっちり緊結されていますから部分的に直そうといったって、なかなかできないんです。はがれていた壁にしたって土をもういちど塗ればいい。屋根も釘を使わないでわらを混ぜてよく練った土で瓦を固めているだけだから、簡単にはがして直せる。
そこで気づいたんです。昔の家って、100年も200年ももっているけれど、あれはハードとして高性能だったり高耐久だったりってことだけではなくて、メンテナンスが非常によかったということなんだな。傷みが分かりやすい。発見したら直しやすい。直す材料も地場の土や木だから簡単に手に入るし、地元の大工さんはどういう技術をもっているかわかっている。だから家が傷んだから壊す必要はなく、補修しながら住み続けてきたんですよね。
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