topページへ つくり手インタビュー
   
丹羽明人アトリエ 丹羽明人さんに聞く
photo 今の木造住宅のつくり方は矛盾だらけ!?
 




家具職人の家に生まれ、「長谷川学校」で修業
生まれ育った愛知県の小牧市で設計をしています。親父はもう亡くなりましたが家具職人でした。小さい頃は父親の作業場が遊び場。木を使って工作するのは大好きでした。大学で設計を学び、先輩が行っていた長谷川敬アトリエに就職しました。長谷川敬アトリエは、会社というよりは「学校」のようなところ。自然素材を使うこと、太陽熱や合併浄化槽など環境に負荷が少ないこと、大量生産ではなく職人がひとつひとつつくることなど、大事なことをたくさん学びました。長谷川学校の「卒業生」にあたるOBが、毎年、全国から集まって忘年会をするんですよ。

入社したての頃は、モスバーガーの店舗設計をいくつかしました。全国展開しているチェーン店なのですが、ひとつひとつに特徴のあるデザインをするという仕事でおもしろかったです。その後、普通の住宅、そして桜町のホスピスの設計と、計10年間アトリエに在籍していました。

アトリエを退職して、しばらくかみさんと ヨーロッパを貧乏旅行していたのですが、途中で小牧の実家に電話をかけてみると「お前、何やってるんだ、戻ってこい」と。実家は、家具工場と家とが同じ敷地で隣り合っていたのですが、家の部分が道路の拡幅にひっかかるから、壊して建て直さないといけない。お前が設計しろ、というわけです。




「グラスウールがきちんと入ってない」のはなぜか?
急遽、帰って、設計事務所の看板を掲げて、まずは自宅の建て直しのための図面を引きました。ヒマだったから、毎日のように大工さんの仕事にくっついて自宅の工事を見ていた、というかいっしょにやっていました。そこで、今までの自分の常識がくつがえる思いをしたんですよ。たとえば「筋交いは当然入れるもの」「梁はボルトで縫いつけるもの」「壁には10センチのグラスウールを入れるもの」というような、住宅金融公庫の仕様に書いてあることが。

それまでの現場で「グラスウールはきちんと入れてくださいね」なんて職人さんに言うと「そんなもんきちっとなんか入るわけないじゃないか。お前が入れとけ」なんて、随分と言われたものでした。ぼくも10人ほど人を使う家具職人の息子でしたから、職人独特の気質についてはさんざん聞かされてました。「誠実できちっとこだわりをもって仕事をする面もあるけれど、急いでたりするとちゃちゃっとやっちゃうようなこともある」とかね。だからグラスウールをきちっと入れないのも職人の悪い面のあらわれで「もっとこまやかにやればちゃんとできるはず」と思っていたんです。当然のようにね。

でも自分の家を建てる現場で実際に自分で手を出してやってみると、グラスウールなんて入れられたもんじゃないんですよ。柱と柱の間には筋交いが入っているし、土台からアンカーボルトが出ているしで、グラスウールはただでさえ入れにくい。それを一生懸命入れようとすればするほど、グラスウールはガラスの繊維だから、手がチクチクしてくるんです。しまいには身体じゅう痛くなるから、やりたくない、いい加減なところでやめたくなるんですよ。そんなもんなんだなあ、とはじめてそこで実感したんですよ。

それでもなんとか、グラスウールをやっとこさ入れ終わった!というところに、水道屋がきてカッターでせっかく入れたグラスウールをガッと切っちゃうんですよ。「なんで切っちゃうの!?」って訊くと「だって、切らなきゃ配管が入んないじゃない」って言う。「それもそうだな」と思っていると、こんどは電気屋が来てまたカッターでブスッ。そればかりか、水道屋さんがこんどはなんと、構造を強くするために入っているはずの筋交いをしっかり、切っちゃうんですよ。「えーっ!水道屋さん、それ、切っちゃいけないもんだって知らないの!?」って言うと「だって、入らないもの」・・・笑い話みたいだけど、ほんとの話。矛盾だらけなんですよ。
       
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