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最近、設計という仕事は流しそうめんを竹筒の上から流す人なんだな、と思っているんだ。おいしいそうめんを、いいタイミングで流して、おいしいタレをもって待ってる職人さんや建て主においしく食べてもらうのが仕事なんじゃないかなって。そうめんがまずかったり、流すタイミングが悪かったりすると、ドボッと最後にそうめんが残っちゃう。食べてもらえないような流し方じゃ、いい流しそうめんとはいえない。だから、そうならないように工夫する。
どんな職人さんたちに流しそうめんの座についてもらうか、という「座組」をするのも設計士の仕事。仕事をとって、いい職人を集めて、職人がおいしく食べてくれるような図面を描いて、流す。そして、建て主がよろこんでくれる家が建つ。それがぼくの仕事。
設計事務所を長くやってきているけれど、職人さんには恵まれているね。うちの事務所のすぐとなりの材木屋を仕事場にしている渡辺正司棟梁はじめ、西島建具、芳賀左官、渡辺電気、水道屋、鳶職、みんな「このパートはこの人でなけりゃ」という、信頼できる「オールスターメンバー」が揃っている。事務所のスタッフにも恵まれてきたしね。そうやっていっしょにやれるチームがいるというのは幸せなこと。お互いの癖も分かっているし、職人さんたちは腕がいいもの同士、何しゃべる訳でないけれど認めあっているよ。
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設計士が出すのはアイデア。それを実現するのが職人さん。その方法については相談しながら決めることにしている。事務所が棟梁の工場の隣だから、プランを考える上でも、木組みで迷いがあったら、まずとなりにでかけていって職人さんに訊くよ。はじめの頃は「なあんだ、そんなことも知らないで」なんて言われたけど、そうやって訊けば覚えるしね。設計士は鉛筆やCADで図面をいじるだけだけど、職人さんは毎日木を使っているんだから、詳しいに決まっているじゃない。だから、謙虚に教わることにしている。
詳細図面なんかあまり書き込まないよ。現場に行って、見て、「こうやっておいて」で済むからね。「つらでおさめて」「面をつける」「ぺろっとなめといてよ」「角は2分丸かな」とか符帳で話して、納まりを決めてきちゃった方がはやいし、うまく行く。「なんでそんなことば知ってるの??」なんて言われるけれど、そのあたりはずいぶん仕込まれたからなあ。
左官の勝又さんなんかに土壁の絵を見せるとね、いい時は「ここ、いいよね」と言ってくれるんだけど、ダメだとボソーッとだまっちゃうんだよね。で、しつこく「どうよ、この絵?」って訊くと、「え?・・・でかいよ」とか、いろいろ言ってくれる。一言あるんだよな。それに耳を傾けて直していくと、どんどんよくなっていく。
よその現場で「いいな」と思う職人さんがいると、スカウトしたりもするよ。「こんどいっしょにやろう」ってね。腕に覚えがある人ならまず、自分がやった現場に連れて行ってくれる。そこでその人の自慢を聞くことから「共通の言葉」さがしがはじまる。職人さんたちといい仕事をするコツは、素直に話しをきいて、信頼関係をつくることだね。設計仲間じゃあ、押しのつよい方と思われているけれど、意外と謙虚なんだよ。(笑)
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自分にはとてもつくれないものを、きちーっと実際につくってしまう職人さんたちにあこがれはつきないけれど、だからといって、ぐずぐずの関係になってしまってはいけない。あくまでも対等。建て主さんが本当に望んでいることをきちんと考えてプランにおこしたり、今の生活に合ったアレンジをしたり、現代の息吹をデザインにふきこんだりすることは、自分の仕事。そこが職人さんだけで受ける仕事との違いになるんだから、そのための「アイデア出し」にあたってはなるべく「高いハードル」を設定するわけ。
結果的には職人さんたちと相談しながら、おさまる妥協点を見つけていくわけだけれど、「やりやすい」とか「速くできる」という低い妥協点に流れるのでなく、さまざまな条件のせめぎ合いの中でなるべく高い妥協点を見いだしたいものだと思っている。だから、完全に「おまかせで」ということは、ない。長くつき合ってきている渡辺棟梁に「松井さんはまだ俺のこと信用してくれてない」って言われるのはそのあたりかな。・・・そして、一般的に設計者の本領と思われがちな「自分の表現」だけれど、控えめにぴりりと、というのがいいね。ワンポイント利かせる、っていうのがチャーミングでいいんじゃない?
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そうやって職人さんの技を積み重ねながら、最終的には建て主がよろこぶ家をつくるのがぼくたちの仕事なんだけれど、この「よろこんでくれるもの」というのがまたむずかしいんだよな。「どんな家にしたいですか?」と聞いても、その答がその人が本当に望んでいることより表面的だったり、奥さんとダンナで希望が違っていたり、ということはよくある。そういう場合には参加の手法で説得するよ。まちづくりでやるワークショップと同じような手法でね。「これまでどんな家に住んできたの?」からはじまって、その人の原体験を聞いてね。その人自身が自分の生活を客観的に見えるようにするための手伝いをしていく中で、いっしょにその人「らしさ」を発見して、その人たちの住む家がどうあるのがいいのかを考えていく。職人さんの「らしさ」を探っていくのと同じ。聞き上手が設計のはじまりだね。
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| 近作より、佐野の民家再生の例。NY在住の姉妹が、金実家の古い民家を再生する夢をかなえた。与次郎組というめずらしい小屋組が見えるように修復した。 |
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近作より、金沢文庫の家。2階縁側上の吹き抜け部分。光と風の通り道。1階部分には、前回インタビューに出た西島建具さんによる「吊り障子」がある。 |
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