topページへ つくり手インタビュー
   
設計士 松井郁夫さんに聞く
photo 人生の節目にはいつも職人さんがいた
 

日本の伝統文化を継承しているのは職人だ!
大工さんをはじめ、職人さんたちの仕事を支える側にまわる設計士でありたいと思っている。設計士というと、個人の作品を表現する作家としてとらえられがちだし、実際に「これが俺だ」というのが前面に出てくるような仕事をする人が多い。でも、設計士は建て主の要望を訊いて、職人さんがそれを具体的に実現してくれるための図面を引くサポーターでいいと思っている。そんな自分を「職人びいき」とか言う人もいるけれど、そういう言い方自体がいかに今まで職人さんの仕事が「手足」としてしか見てこられなかったのか、ということを表しているよね。職人さんたちは口べただったり、歴史を俯瞰して自分たちの仕事を位置づけるということがなかったりするから、なんとなく脇に押しやられてきたけれど、実は職人さんたちこそが日本の伝統文化の正当な継承者なんだ。その技とか技の背後にある価値観こそが、家づくりを通して伝えていかなきゃいけない日本文化だと思う。だから、設計士はもっと大工さんの仕事を知って、サポートする側にまわった方がいいよ。

越前大野の職人町でおがくずにまみれて遊んだ少年時代
ぼくは18才になるまで、福井の大野という城下町で育った。うちはおばあちゃんの親の代まで「檜物屋(ひものや)」といって、ふるいや弁当箱などまげもの製品をつくる職人だったようで、家業はやめていても住まいは大鋸(おが)町という職人町にあった。「おが町」というぐらい、おがくずが多くてね。それを、飼料だか肥料にするために貯めておく「おがくず場」があって、その中からカブト虫を探し出すのが、楽しみだったな。「郁夫ちゃんがいない!」とおばあちゃんが騒ぎ出すと、必ずおがくず場でおがくずだらけになってたものだ、ということをよく聞かされたよ。 町内には建具屋さん、左官屋さん、臼屋さんなんかがいて、二間間口の仕舞た屋の八畳ほどの土間で作業する様子がおもしろくて、じーっと見入ってたよ。建具屋さんが木と木を糊もつけないのにぴたっ!とおさめていくのを感心して見てると、十字に組んだ切れっ端なんかくれてね。今思い出しても、いい仕事見せてもらったと思うよ。職人は口は悪いし、こどもをからかうし、べらんめえ調で、それが今の自分にもちょっと移っているかな。(笑)
職人さんたちの仕事見ているのが好きなのは、野球とかサッカーとかがあんまり得意でなかったから、というのもあるな。からだは大きかったんだけれど、色は白いし、太ってるし、スポーツはへたくそでね。絵だけはうまくて、描いた絵は必ず何かに入選したり賞をとったりするもんで、小学校の頃から「この子は美大に行く」とまわりも自分も思っていたね。そんな少年時代だったから、職人さんと話すことには全く抵抗なくて、むしろ現場監督通さずに、直に職人さんと話す方が好きだな。
大工から身を転じた設計士・小川行夫にたたきこまれたこと
地元の高校を卒業して、芸大のデザインに進んだ。大学で彫塑をする機会があって、はじめて立体にめざめたね。学部を卒業する頃に、田舎の大野の古い水飲み場が壊されそうになって、その保全運動からまちづくりにぐっと興味が傾いた。で、ちょうどその頃大学院に新しくできた環境造形デザイン研究室に進んで、造園や歴史的町並みのことを勉強した。そんな流れから都市計画の事務所に就職はしたんだけれど、結局「百年の計」より、彫塑みたいに実際に自分で手触りの感じられる「つくること」をやりたくなってね。そこではじめて興味が建築に向かったわけ。
その頃、今のかみさんとつきあっていて、その実家がたまたま木組みの家だったんだ。名棟梁は、最後は自分で図面を引く、というけれど、その家も、元は棟梁で、後から設計士になった人の設計でね。「こういう家をつくる人のところで建築を身につけたい」ということでその人の事務所に弟子入り。大野では木組みの古い家を随分見てはいた。そして、大学で建築を学ぶことなく、いきなり木組みの本流に飛び込んでしまったわけ。木組み以外の建物に関わってこなかったから、金物で継いだような家を見ても「あれはたまたま簡単につくっているだけ」と思っていたね。 職人出身だから、口も悪くて、評価も辛い人だったよ。大分苦労もしたけれど、聞く話のひとつひとつ、目から鱗だったね。現場では大工が仕事で使う特別な「符帳(職人ことば)」も随分と覚えた。それと職人の世界での「やっちゃいけないこと」を手厳しく教えられた。そんな戒めはいまだに生きている。「やっていいこと」しか教えない学校教育とは逆なんだな。「やっちゃいけないこと」っていうのは一見、制限のように聞こえるけれど、実は、それさえちゃんとわきまえれば、いくらでものびのびつくっていい、冒険ができる。そんな幅を与えてくれるものなんだよな。
       
  前ページ 0 | 1 | 2 | 3 次ページ


木の家ネットの会員 会員が実践する木の家づくり 更新ページ
topページへ

このサイトについて
地域別
 北海道・東北関東(東京以外)東京
 東海甲信越・北陸関西
 中国・四国・九州
職人がつくる | 日本の | 木の家
人に健康、環境にやさしく
いざという時に心強く | 末長く
愛着をもって住める家
そんな家を求めるあなたと
つくる私たちの縁結びのサイトです
現場レポート
インタビュー
赤堀楠尾の林材レポート
伝統構法の復権
木の家そもそも話
木の家Q&A
木の家ネット 総会と活動
 (c) 「職人がつくる木の家ネット」プロジェクト   web: http://kino-ie.net