[木の家]現場レポート1_田上
 
つくりながらともに考えていく

晴吉さんが施工する建物はすべて、設計から自分で手がける。「自分の納得のいく建物をつくるには、大工になるしかない」そう思って大工の道に入った晴吉さんがつくる空間を見て、ギャラリーやカフェのオーナーからの依頼も来る。

普通の家づくりは、住む人とつくる人との関係で進む。人に来てもらう空間づくりとなると、オーナーとつくる人とで、そこにはいないお客さんとの関係を想定する。どんな人に、どのような時間を過ごしてほしいのか。何をそこから持ち帰ってもらいたいのか。オーナーと晴吉さんとでとことん話し合いながら、ともに空間をプロデュースしていく。

「どんな空間にしようかって、最初からはイメージ、わかないんです。ここにこれを置きたい、とか、ここはもっとこうしたい、というオーナーさんのこだわりが見えてきたところから、いっしょにつくっていくんです。だから、契約の時に完成図面ができあがっているということは、まずないですね。」


こだわりのオーナーたちとの出会い

東海道の宿場町としての雰囲気を色濃く残す三重県関町の古い町家を、自然食レストランとして再生したカフェ「而今禾(じこんか)」。韓国で見つけた窓枠。ヨーロッパでめぐりあった水道のカラン。オーナーの西川さんがこだわりと愛着をもって集めた「もの」達が、設計に入る前にすでに出番を待っていた。

自身も陶芸作家であり、地元のアーティストの紹介も熱心にする三代目花井新兵衛さん。器を買ってもらうだけでなく、器のある空間でくつろいでもらいたいと、ギャラリー「轆子庵」を構想。はじめて訪れるお客さんと、繰り返し足を運んでくれる常連さんとで、くつろいでもらう空間の質を変えたい、という希望が強くあった。

「こだわる人たちやから大変なことも多いけれど、つくっていくプロセスはとても刺激的。いい緊張関係と信頼関係を築くことができたので、以来ずっとつきあいがつづいてますよ」オーナーたちも、彼らの思いをしっかりと受けて立つ晴吉さんとの空間づくりを楽しんだにちがいない。

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上/ギャラリー而今禾のカフェ部分。右は入り口と厨房を中庭から見たところ。

左/障子の貼り方は施主の考案。
仕上げ塗りをしない、荒壁仕上げのままのカウンターキッチン。身体が触れれば、崩れていくことは、承知の上での施主の希望だった。
洗面所とトイレの扉。
湯の山温泉にある「器屋」のカフェ棟「轆子庵」。
2階は会員制のクラブで、ゆっくりくつろげる空間。妻側に山が見える特等席からのながめ。。
左/1階はギャラリーと喫茶。

中/壁に埋め込んだ照明付き飾りスペース

右/貫と貫の間に障子を入れた明かり取り。